はじめに:仮想水(バーチャルウォーター)概念の利用と混乱

仮想水(バーチャルウォーター)とはジョン・アンソニー・アラン教授により提言されたもので、乾燥地域の水を巡る争いが緩和されている理由に持ち出された概念です。

食糧の輸入は自国で生産した場合に要する水の節約に繋がるため、仮想的な水を輸入している様なものだとした考え方で商取引によって水資源の負担を分散出来る事を示し、この思想に共感した人々により様々な取り組みが行われている様です。

しかし、節水による紛争回避とも言える概念を元にしながら、使用水の貿易に変換し水の危機を訴えかけるという手段と目的の取り違えにより概念も間違えた混乱状況が存在し、あろうことか日本では受け入れられODAの根拠にも挙げられている始末です。

おそらく同情好きで世話焼きな日本人特有の体質が発揮されたのでしょうからその事を悪いとは言いません。ただ、事実を伝えず一方の視点のみで国の財政を圧迫するのは如何なものかと思う訳です。

その辺はぼちぼち解するとして、仮想水を根拠に他国の水資源消費を強調しながら削減方法を示さず、環境問題を意識させながら更なる開発や援助の推奨へと展開される論理は「馬鹿げている」と最初に指摘しておきます。


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このページ。
仮想水の嘘
仮想水は絶対ではありません。実体が無いため見落としている部分があり、その点について記しました。ここを読んだら他のページが意味を失います。それでも良ければ是非。
概念の混乱
『小麦1キロ生産に1トンの水』という通説に正確な根拠を求めたという嘘の他、印象操作を行った新聞記事や密かに隠されている事柄のヒントなど。
無理なく15% 削減
批判するだけで何も対案を出さないのも気が引けるため簡単な対策案を記しました。
参照サイト
貿易も絡む話なのでその辺も含めて色々な参照先を列挙したページ。
サイトマップ
サイトマップです。

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水や食に対する危機管理は強く望みますが、日本国内の生産力を上げれば世界の食糧庫と呼ばれる国の輸出量軽減に繋がり地球規模での環境改善へ貢献できるのに提言せず、工業製品の輸出対価で食糧を買えば済む意味の事を口走った沖教授は、如何に奇麗事を言おうとも環境屋形船の船頭にしか見えません。(ちなみに対米貿易は黒字。工業で頑張り過ぎると『病気の牛でも買いやがれ』と言われかねないので無理)

確かに工業製品、特に車の輸出で外貨を獲得出来ています。しかしその優位性は何時引っくり返るかも解らない情勢にあり、今、食を放置して自給率を下げる様な事をすれば将来は餌に釣られる犬となるしかなく、あらゆる輸出製品を好き放題に価格設定される恐れが有るため安易に頼るのは危険です。

最近では『食料・水問題の解決には食料損失・廃棄の削減が決定的に重要ー新研究 』の様な研究もある事ですし、そろそろ歪んだ仮想水の概念から立ち返った方がいいと思うのですが。

ともあれ、世間は仮想水歓迎真っ盛りですから矛盾は矛盾として突いておきたい。

それがこのサイトを立ち上げた理由です。

無思慮のまま迎合する前に一考願えれば幸い。

――dan――
(2008-10-17改訂)

私的立場

私個人としては仮想水の概念を素晴らしい……とまではいかないものの節水を考える有効手段と受け止めていますし世界の食糧庫と言われる国々で地下水や灌漑用水の枯渇が叫ばれている事も承知していますから、沖教授の提唱する水や食料の危機感にはそりゃもう激しいまでに同意します。しかし、環境問題として捉えるのは先に書いた通り大反対です。元は紛争回避の考察ですから。

日本の自給率低下は政府の方針(減反政策:Wikipedia)ですが、そこまでしなければならないのは貿易摩擦に対する判断が関係しています。そして、様々な品目についてもっと輸入しろと圧力をかけているのは水危機を抱えた食糧庫(毎日記事)です。

好きなだけ水を使い自国製品の押し売りを続ける国が水で泣いても援助や技術提供など行う必要はありません。絶対に利権を奪われない事業形態で食い込むなら別ですが、法は作る物と考える国民性ですから後付の法により強制的に接収されるのがオチでしょう。断固放置で対応するべきです。

発展途上国の水問題は、将来を見据えて他国に利権を握られる前の積極的解決を望みます。しかし、沖教授の構想する援助対象には日本に不利益だけをもたらす特定亜細亜が含まれているため部分的に同意できません。 同情めいた疑念もあるにはあるのですが、2008年06月初旬のテレビ出演は時期的にみて下記の問題を絡める意図があったのではないかと邪推しています。

レコードチャイナ:中印が「水めぐって」軍事衝突の危機―米メディア

上記魚拓

仮想水と使用水の混同に注意を

仮想水(バーチャルウォーター)は輸入側、現地使用水(ウォーターフットプリント)は輸出側、の様にそれぞれ視点が違います。また、輸出入に伴って消費生産が生じる事は有り得ません。そこを混同した論調が存在するので注意が必要です。


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