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無理なく15% 削減:『水』の消費量削減はいつでも出来る

仮想水を根拠に環境を語る人は削減案も示さず危機感を煽りますが、はたして最初から放棄しなければならない程に難しいのかというとそうでもなく、最大の水コストを要する(とされている)牛肉を豚や鶏で代替するなら案外簡単です。

切り替えの障害となるのは肉の好みくらいでしょう。それについて内容の正確性はともかく感覚的に同意できますので次の引用を参照して下さい。

畜種による官能特性の違い

動物種により味や香り、食感が異なると思われているが、実際に異なるのは香りと食感であり、味は動物間による違いが無いことが明らかにされている。

Wikipedia:食肉『 5.3 官能特性と成分』より引用)


ここから代替例ですが、仮想水量は沖教授の提示している数字を基にしています。

1t辺りの仮想水の比率は、下記を参考に豚を1として、牛3.5倍、鶏0.75倍と考えています。

  • 牛=35,100m3/t
  • 豚=10,000m3/t
  • 鶏= 7,500m3/t

それぞれ仮想水の総輸入量は下記の様になるそうです。括弧内は大雑把な物量。

  • 牛=140億m3/年(40万トン)
  • 豚= 36億m3/年(36万トン)
  • 鶏= 25億m3/年(30万トン)

上記を合計すると『201億m3/年(106万トン)』です。このうち牛の分を豚と鶏に半分ずつ振り分けて、それぞれの仮想水を計算し直します。

  • 豚= 56億m3/年(56万トン)
  • 鶏= 40億m3/年(50万トン)

すると、仮想水は半分以下の『96億m3(106万トン)』となり、『105億m3』もの削減が可能です。

ウォーターフットプリントの表と比較して同程度(仮想水に対し約62%)に合わせてみたところ、豚と鶏の合計は『60億m3(106万トン)』となりました。削減分は『65億m3』といった所でしょうか。それを踏まえて輸入食糧生産に水427億トンと銘打った推計から差し引くと『362億m3』なり約15%の削減。継続後の6年目で390億m3の節水が出来る訳です。

畜産ZOO鑑の『世界の肉用牛生産の現状』によれば「2001年の世界の牛肉生産量は5665万トン」との事で、このうち800万トンほどを他の肉へと切り替えるだけで65億m3の20倍、約1,300億m3という日本の総使用量を遥かに上回る節水が可能となります。何故、こうした現実を無視できるのでしょうか。

宗教上の理由で食せない国の事を考えると全て豚や鶏に換える訳にもいかず適当に800万トンとしましたが、真に地球環境の事を考えるのであれば、特殊な事情の地域を除く全世界に一定の我慢をさせても構わないでしょう。間違いなく大幅な節約が出来ますし、現在の食事を然程変えずに済みます。

しかし、牛と比べると豚も鶏も小さいため、質量的な観点で代替不可能に思われるかもしれません。

成長速度を忘れてやしませんか?

比較すると意外な程に余裕なのです。

飼育期間

※それぞれの個体が出荷されるまでを1サイクルと考えています。

1頭:約850日〜913日(28〜30ヶ月齢)750kg前後

1頭:180日間110kg

◆◆4サイクル(720日440kg)の場合◆◆

2頭の飼育を4サイクル繰り返して880kg、牛1頭を育てるより三ヶ月以上も早く該当量の代替となる。

1羽:約60日約2〜3kg

◆◆3サイクル(180日約6〜9kg)の場合◆◆

20羽の飼育を3サイクル繰り返して約120kg、豚1頭を育てるのと同日数ながら重量では上回る。

◆◆13サイクル(720日約26〜39kg)の場合◆◆

30羽の飼育を13サイクル繰り返して約780kg、牛1頭を育てるより三ヶ月以上も早く該当量の代替となる。


飼育期間と質量をそれぞれ比較し、充分代替可能であると御理解頂けたと思います。次に、これだけ育てる面積があるのか、大雑把な数字と例を下記に紹介しておきます。

飼育面積

牛(追込み式牛舎)

1頭あたり6〜8m2

http://nagasaki.lin.go.jp/manual/keiei/2.html

豚(海外例)

経産豚1頭あたり2.25m2、未経産豚1頭あたり1.64m2以上

(参照:EU委員会の飼養基準

未経産豚の場合、牛1頭に要する面積で3頭の飼育が可能ですから「4サイクル(720日)440kg」の3倍、1,320kgになり、牛よりも短い期間で倍近い生産量になります。

鶏(みつせ鶏とブロイラーの比較例)

ブロイラー:1坪(約3.3m2)あたり約60羽

みつせ鶏:1坪あたり約40羽

(参照:素材探訪6月号 のびやか、健やか ヨコオの「みつせ鶏」

みつせ鶏をほぼ半分のスペースで40羽飼育し「13サイクル(720日)約26〜39kg」が経過すれば、約1,040〜1,560kgと成長次第で牛の倍以上を生産出来ます。ブロイラーなら更に1.5倍。


以上のものは一般的だろうと思われる数字を単純に追っただけで個々の環境差などを無視していますが、仮想水も似た様な物ですから充分だと判断します。

さて。

今、消費削減を行えば水資源も緩やかに回復すると思われますが、環境問題を語る人たちは、何故、悪戯に危機感を煽り「世界に貢献を」などと消費一辺倒の水資源開発に目を向けさせるのでしょうか。

世界の食糧庫と言われる国は輸出利益を守るため無計画に水を使用する危機感の欠如ぶりですから、何をした所で必ず頭打ちとなる時が来ます。もし彼らが水の問題を自国の責任と考えているなら、とうに輸出制限などの生産安定政策を執っている筈ですが、最も水コストの高い牛肉を「もっと輸入しろ」と突いている通り、輸出利益のために環境問題を無視しているのです。

この事実を知りながら簡単な代替案すら出さないのは、輸出国の利益を守るために展開されている理論だからではないか、と疑っています。

なぜなら仮想水概念は、輸出側が「水不足を補う国があるなら仕方の無い事」と浪費責任を逃れる口実に使えるだけでなく「渇水の危機に輸入側も加担しているから援助するべきだ」と責任転嫁に利用出来るのです。

ゆえに、異を唱えたい。

貿易摩擦の都合に合わせて意図的な自給率低下を演出し、ひたすら輸出国の我侭に付き合ってきた日本は、水不足を補っているのではありません。土地です。

輸出国が広大な放牧地を維持する水の確保に喘いでいるのであれば、負担の軽い豚や鶏で代替して貰っても一向に構わない訳ですし、養豚養鶏であれば少ない面積で運営出来ますから日本国内での増産も可能でしょう。

宗教上のタブーを持たず、四季への親しみから環境問題にも敏感な日本人は、地球のためであれば食卓から牛肉が消えても文句を言いません。輸出国は水資源を大切に扱い、継続生産が可能な範囲で留めるべきです。

牛肉を豚肉鶏肉で代替するのは、合理的で実現可能な地球環境に優しい考え方だと思いますが。


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